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少女「『わがまま王様と悪い魔女』」

225view

更新日2017-03-23 21:24:00

まとめ人:GLDNさん   (0)

king (1)
1以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:07:18.48 ID:zJnoMDvlo

 むかしむかしあるところにわがままな王様がいました。
 わがままな王様はとにかく気まぐれで、いつも自分勝手なことばかり言ってはみんなを困らせていました。

 例えばある時は……










2以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:08:01.04 ID:zJnoMDvlo

王様「騎士長! 騎士長はおらんか!」

騎士長「は、ここに」

王様「ワシは退屈じゃ。国一番を決める武術大会を開け!」

騎士長「御意。さっそく手配します」

王様「いやそれでは面白くない」

騎士長「では?」

王様「東の国との合同大会……いや戦争じゃ! 東の国に戦争を仕掛けよ!」

騎士長「……」

王様「急がんかノロマ! さっさと行って滅ぼしてこい!」

騎士長「御意……」







3以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:08:28.61 ID:zJnoMDvlo


 またある時は……








4以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:09:35.11 ID:zJnoMDvlo

王様「料理長よ! どこにおる!」

料理長「はいはいここにおりますよ」

王様「ワシは腹ペコじゃ。何かおいしいものを出せ」

料理長「では雄鶏の香草焼きを作ってまいりましょう」

王様「この大ばか者! 雄鶏の香草焼きなんて珍しくもなんともない!」

料理長「で、では?」

王様「クジラ」

料理長「クジラ……」

王様「の、でっかい卵焼きが食べてみたい! すぐに用意に取り掛かれぇぇい!」

料理長「クジラの卵!? そんな阿呆な……」

王様「阿呆?」

料理長「いえ何でもございませーん!」







5以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:10:02.28 ID:zJnoMDvlo

 とにかく毎日がこんな具合。
 みんなはうんざりを通り越してこれが普通ぐらいになっちゃって。
 わがままさえなければいい王様なんですけどね。

 王様の優しい顔を見られる人はそう多くはありません。
 というよりこの国では一人だけ。
 王様の孫娘一人だけでした。







6以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:10:34.25 ID:zJnoMDvlo

侍女「姫様、王様がいらっしゃいましたよ」

姫「本当だどうしよう……」

侍女「どうしようも何も普通にしてればいいと思いますが」

姫「気構えが必要なんだよおじいさま相手には」

王様「おおーい孫娘ー! 孫娘やーい!」

侍女「さ、姫様、深呼吸」

姫「いや別にそこまでは。……はーい、こちらですー!」







7以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:11:06.94 ID:zJnoMDvlo

王様「やあやあ花のように愛らしく太陽のように美しいワシの孫娘や」

姫「会うたび会うたび同じ言葉で私を誉めそやしてくださるおじいさま、ごきげんよう」

王様「やだなワシの可愛い孫娘、美しいものはしっかり美しいと言わなくては」

姫「過剰なくらいにありがとうございますおじいさま」

王様「なにをしておったね?」

姫「みんなでお茶を」

王様「うむうむ、よきことじゃ。ワシは散歩をしておったよ」

姫「いい天気ですものね」

王様「しかし少し日差しが強すぎるきらいがある。おいそこの、少し太陽を遮れ」

侍女「無理です、飛べませんので」

王様「ワシに逆らうかっ!」

姫「わたしの侍女に無茶言わないでくださいませおじいさま」







8以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:11:33.47 ID:zJnoMDvlo

王様「ふん、命拾いしたな下仕え」

侍女「価値あるものは生き延びますゆえ」

王様「ぐぅぅっ……」

姫「お、おじいさま、またあの話してくださらない? わたしのお気に入りのあの話」

王様「おや、また聞きたいのかい孫娘や」

姫「ええ、だってとても素敵な話だもの」

姫(あとこの空気に堪えられないもの)

王様「ううむ、しかしなあ」

姫「お願いお願い」

王様「わかったわかった仕方ないな。では始めるぞ。むかしむかしあるところに……」







9以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:12:01.27 ID:zJnoMDvlo

 王様の話はこう始まります。
 むかしむかしあるところに優しい王子様がいました。
 優しい王子さまは思いやりと勇気に満ち溢れ、まわりのみんなに慕われていました。







10以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:12:29.01 ID:zJnoMDvlo

「あ、王子様こんにちは!」

「ごきげんよう!」

「今日もいい天気ですね!」

「転んで怪我などなさらぬよう!」







11以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:12:56.33 ID:zJnoMDvlo

 実際は転んで怪我なんてドジはしません。
 でもお城の中しか知らないフリをした王子は、真剣に「わかったよ!」とうなずいてみせました。
 本当はお城を抜け出すことなんて日常茶飯事だったんですけどね。

 さて今日も外へと繰り出した王子様、森の方へと向かいます。
 木々の間を歩いていくと突然視界が開けて、お花畑が広がりました。
 そこにいたのは花のように愛らしく太陽のように美しい女の子。
 顔を上げて王子の方に目を向けました。







12以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:13:49.69 ID:zJnoMDvlo

娘「あら、また来たのね」

王子「いやあお城は窮屈で」

娘「王子さまは大変ねえ」

王子「ここに来ると気が休まるよ」

娘「こんなに綺麗なところだものね」







13以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:14:16.39 ID:zJnoMDvlo

 君も綺麗だよ。
 いや君の方が綺麗だよ。
 僕は君に会いに来たんだ。

 王子はそれが言えません。
 ほんの短い一言二言なのに。







14以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:14:43.46 ID:zJnoMDvlo

娘「なあに、変な顔しちゃって」

王子「べ、別に」

娘「座ったら?」

王子「そうだね」

娘「なんでそんなに離れるの?」

王子「じゃあこれくらい?」

娘「じゃあって?」

王子「さあ……」

娘「変なの」

王子「わ、笑うなよ!」







15以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:15:31.79 ID:zJnoMDvlo

 王子はこの時間が好きでした。
 お城にいるときはお行儀良くしていなければなりませんが、ここでは子供らしくしていてもよかったからです。

 二人は一緒に長い時間を過ごしました。
 川に行ったり、ごっこ遊びをしたり。
 夜はお城にいなければなりませんが、いつか一緒に星を見ようとも約束しました。







16以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:16:25.34 ID:zJnoMDvlo

王子「絶対だよ」

娘「うん。いいよ」

王子「よぅし、そうと決まったら計画を立てないと!」

娘「……」

王子「爺やはちょっとボケが入ってるし見回りは怠け者が多いから…………どうかした?」

娘「あ……ううん。何でもないよ」

王子「じゃあまた明日!」

娘「うん」







17以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:16:54.51 ID:zJnoMDvlo

 でもその明日は訪れませんでした。
 女の子が消えてしまったからです。
 お花畑には誰の姿もありませんでした。
 次の日も、その次の日も。

 人をさらう魔女が出たと聞いたのは、それからしばらく後のことでした。







18以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:17:24.92 ID:zJnoMDvlo

王様「……孫娘は眠ってしまったか」

姫「ううん……」

侍女「仕方ありませんよつまりませんもの」

王様「首をはねられたいか?」

侍女「滅相もない。それにしてもその話、いつもそこで途切れますよね。続きはあるのですか?」

王様「どう思う?」

侍女「ないのでしょうね」

王様「……」

侍女「とても中途半端な話です。物語として完結していない。作った人は三流作家なのでしょう」

王様「我が孫娘を部屋に連れていけ。今すぐにだ」

侍女「承知いたしました」







19以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:17:51.88 ID:zJnoMDvlo

王様「中途半端。物語として完結していない。三流作家」

王様「ふん。その通りだろうさ」

王様「なぜならこれはワシの話なのだから」







20以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:18:23.13 ID:zJnoMDvlo

 その夜、王様の孫娘がさらわれました。
 悲鳴を聞いた者もなく、ただ窓だけが開け放たれて。
 誰もが魔女の仕業と言っています。
 王様は当然激怒します。

 早く姫様を助けなければ。
 物語はここから始まるわけです。







22以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 23:26:06.69 ID:OEN79FVxO
期待






25以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:37:36.99 ID:+RpNN8bFo

王様「騎士長! 騎士ちょおおぉぉう!」

騎士長「は、ここに」

王様「魔女の討伐命令は出したか!?」

騎士長「今朝の時点で」

王様「そうかならいい!」

騎士長「よいので?」

王様「いやよくない! それならばなぜまだ孫娘が戻ってきておらんのだ!」

騎士長「は……それが少々問題が起きておりまして」

王様「問題? 申してみよ!」

騎士長「こちらをお取りくださいませ」

王様「剣? うちの軍のか」

騎士長「はい」







26以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:38:04.68 ID:+RpNN8bFo

騎士長「どうぞ抜いてみてください」

王様「っ……抜けぬ!? 抜けぬぞ!」

騎士長「は。このようなことが軍全体で起こっているのです」

王様「何だとぉ……?」

騎士長「我が軍の剣は一本たりとも抜剣することができません」

王様「一本たりとも……?」

騎士長「ええ。それどころか今調べさせておりますが、この国全体を見ても抜き放つことのできる剣がないかもしれません」

王様「何ぃ!?」







27以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:38:31.15 ID:+RpNN8bFo

王様「つまり……」

騎士長「そう、つまり我々は現在武装を封じられた状態です」

王様「そ、そんな」

騎士長「しかしとりあえず分かったことが一つ」

王様「?」

騎士長「これは明らかに魔法を扱う者の仕業ということ」

王様「そんなことは分かっておるわ馬鹿者!」

騎士長「いえしかし、魔女と呼ばれる者のうち真に魔法に通ずるのはほんのわずか」

王様「何が言いたい」

騎士長「この辺りで本物の魔法を使えるものはただ一人、沼地の魔女でしょう」

王様「!」







28以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:39:26.00 ID:+RpNN8bFo

 沼地の魔女。
 魔法を悪用し人をさらう恐ろしい魔女。
 それは王様にとって最も憎むべき相手でした。







29以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:39:54.57 ID:+RpNN8bFo

王様「沼地の魔女……あやつめ、このワシからまたも大事なものを奪い去ろうというのか」

騎士長「……」

王様「おとなしくしておるからと見逃してきてやったがもう限界じゃ! さっさと行って滅ぼしてこい!」

騎士長「ですから武器がないのです」

王様「知ったことか! 素手であの首をもいでやれ! 八つ裂きにせよ!」

騎士長「しかし……」

王様「うるさいうるさい、さっさとせぬと首をはねるぞノロマ!」

騎士長「御意……手配いたします」







30以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:40:24.78 ID:+RpNN8bFo

 王様はイライラと広間を歩き回ります。
 孫娘のことが心配で心配でなりません。
 お腹を空かせてはいないかな。
 怖がって震えてはいないかな。

 そんなことを考えていると、王様のお腹が鳴りました。







31以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:40:59.43 ID:+RpNN8bFo

王様「……料理長! 料理長!」

料理長「はい王様、なんでしょう?」

王様「ワシは腹が減ったぞ何か作れ!」

料理長「はい王様! ……と言いたいところなんですが。少々問題が起きておりまして……」

王様「なんだお前もか」

料理長「はいぃ。実は鍋がどいつもこいつも大食らいになっちゃって。材料を入れてもなくなっちゃうんですよー!」

王様「ええい魔女か! なんと小癪な!」







32以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:41:25.60 ID:+RpNN8bFo

 これはのんびりもしていられなくなったようです。
 王様は料理長を大鍋に突き落とすと階段を駆け下ります。
 向かう先は軍の演習場。
 急いで大空の下に駆け出ました。







33以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:41:59.17 ID:+RpNN8bFo

王様「騎士長! 騎士長! 騎士長?」

騎士長「……はいなんでしょう王様」

王様「何故そんなところに転がっておる?」

騎士長「鎧が急に重たくなったので」

王様「なに、重たく?」

騎士長「動けません」

王様「脱げばよいではないか」

騎士長「脱げません。魔法です。他の兵士もみな同じ状態で」

王様「何ぃ! では……」

騎士長「わが軍は今、完全無欠に無力です」

王様「ええい魔女め! 何たることだ!」







34以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:42:26.95 ID:+RpNN8bFo

 王様は今度は階段を駆け上がりました。
 孫娘の部屋に飛び込んで、声を大きく張り上げます。







35以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:42:52.87 ID:+RpNN8bFo

王様「侍女よ! 侍女はおらんか! この際お前でも仕方ない、孫娘を取り戻しに行ってこい!」

召使い「あの方なら昨日実家に帰られましたよ」

王様「何ぃ!?」

召使い「なにもこんな大変なときに帰らなくったっていいのにねえ」

王様「っ……」

召使い「王様?」

王様「ええいあの女! ぶっ殺してやる!」







36以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:43:30.20 ID:+RpNN8bFo

 錯乱気味に叫んだ王様は、しばらく考え込みました。
 これからどうするべきなのか。
 どうすれば孫娘を助けられるのか。

 でも本当は答えは分かり切っていて、あとは覚悟を決めるだけでした。







37以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:44:13.10 ID:+RpNN8bFo

王様「ふん、役に立たないクズどもめ。こうなったらワシが一人で何とかしてやるわい」

王様「抜け穴はちゃんと昔のままじゃのう。これなら問題なく外に出られそうじゃ」


 「王様!? 王様がいらっしゃらないぞ! どこにもいない!」


王様「わめけわめけ愚民ども、お前たちが惑っているうちに全て終わらせてやるから見ておれよ」

王様「帰ってきたら役立たず共はまとめて打ち首にしてくれるわ」

王様「ではいざ行かん魔女退治! 覚悟せよ邪悪な化け物女め!」

王様「うおおおお!」







38以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:45:01.44 ID:+RpNN8bFo

 雄叫びと共に王様は城壁の穴から飛び出します。
 向かう先は森の沼地の魔女のところ。
 とりあえず抜けない剣と底なし鍋とを手に持って、王様は一目散に森へと飛び込みました。







39以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:45:37.07 ID:+RpNN8bFo

王様「さてやってきたが森の中。どちらへ向かえばいいのやら」

王様「皆目見当もつかんわい」

王様「うん? あちらに誰かおるな」







40以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:46:08.83 ID:+RpNN8bFo

 進んでいった先の木の根元に、誰かが座っているようでした。
 王様が近づくとその誰かは顔をこちらに向けます。
 フードを目深にかぶったなにやら怪しい人物です。







41以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:46:52.21 ID:+RpNN8bFo

王様「おいそこの怪しい奴、名を名乗れ」

商人「私は商人でございます」

王様「女か」

商人「ええ。国から国へと渡り歩いて不思議な道具のやり取りをしております」

王様「不思議な道具?」

商人「はい。例えばこちらこの絵本」

王様「何の変哲もない絵本じゃないか」

商人「そう見えるでしょう? ですがひとたび開いてみますと……」

王様「ぬ、まぶし……!」







42以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:47:27.31 ID:+RpNN8bFo

「今日は何して遊びましょうか」

  「僕はごっこ遊びがいいと思う!」

「どんなごっこ遊びする?」

  「勇者様が魔女からお姫様を救う話!」







43以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:48:01.17 ID:+RpNN8bFo

 何かが見えたような気がしました。







44以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:48:28.66 ID:+RpNN8bFo

王様「――くっ、やめんか本を閉じよ!」

商人「どうですお気に召しましたか王様?」

王様「! 貴様、魔女だな。ワシを幻惑しおったな!」

商人「滅相もありません。私はしがない商人ですよ」

王様「信じられるかこんな気味悪いものを出しおって! 成敗してくれるからそこになおれい!」







45以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:48:58.56 ID:+RpNN8bFo

 震える手で剣を抜こうとする王様ですが、柄はびくともしませんでした。
 王様は焦りで怒り狂います。







46以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:49:25.51 ID:+RpNN8bFo

王様「くそ! くそ!」

商人「おや剣が抜けないのですか?」

王様「魔女めぬけぬけと!」

商人「ダジャレは好きではありません」

王様「違うわ!」

商人「これをお使いなさいませ」







47以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:49:52.15 ID:+RpNN8bFo

 そう言うと商人は香水のような物を剣の上から振りかけます。
 するとあら不思議、王様の手の中で何の抵抗もなく剣が抜けたではありませんか。







48以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:50:22.85 ID:+RpNN8bFo

王様「な……!?」

商人「どうです驚かれました?」

王様「お前……やはり魔女……」

商人「相手を手助けする魔女がおりますか?」

王様「だ、だが」

商人「これは物をはがす香水です。東の国では糊付けを解くときに今でも重宝されていますよ」

王様「……そうなのか?」

商人「信用されてないならばそうですね、これをタダであなたにあげましょう」

王様「なに?」

商人「商人は信用が命。信用を得るためならばこれくらいのことはいたします」

王様「本当か?」

商人「信用が命と申し上げました。嘘をつくことはいたしません」







49以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:50:52.21 ID:+RpNN8bFo

王様「う、うむ。ならばもらってやろうではないか!」

商人「ありがたき幸せ。次回からもごひいきに」

王様「気が向いたらな。では」

商人「あ。お待ちを。こちらもお持ちになってくださいませ」

王様「さっきの絵本? いらんぞそんなもの」

商人「ぜひお持ちになってください。私の献上品を恩と思っていただけるなら」

王様「しかしなあ」

商人「ぜひぜひ」

王様「でもワシいらんし」

商人「これだからわがままジジイは」

王様「え?」







50以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:51:58.15 ID:+RpNN8bFo

商人「申し上げるのが遅れましたがそちらの絵本、あなた様の道しるべとなってくれるはずです」

王様「道しるべ?」

商人「きっとあなたの行くべきところへと導いてくれるでしょう」

王様「絵本が?」

商人「絵本が。さあさ持って行った持って行った」

王様「おおう!?」







51以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 21:52:30.10 ID:+RpNN8bFo

 どん、と追い立てられるように数歩進んで振り返ると、もうそこには誰の姿もありませんでした。
 首を傾げた王様は、手の中の絵本を見下ろします。
 ひっくり返すとそこには地図。
 沼地までの道筋が、大まかに描かれていました。







53以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/08(金) 22:01:35.31 ID:ZxEswi8oo


先が気になる






54以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:06:21.40 ID:uTtcU/Zpo

王様「ええと、この大木を回り込んで」

王様「それからこの二股の道を右に……いや左か?」

王様「微妙にゆがんでいていまいち判別しづらい……」

王様「ええいくそ、この地図まったく役に立っておらんぞ!」







55以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:06:53.98 ID:uTtcU/Zpo

 地図を頼りに歩いていた王様ですが、いつの間にか道を外れてしまっていました。
 今歩いているのがどこなのか、もはやまったくわかりません。
 帰り道すらどちらやら。







56以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:07:54.75 ID:uTtcU/Zpo

王様「ううむ参った。これでは孫娘のところにも行けんわい」

王様「どこぞにここらの道に明るいものはおらんだろうか」

王様「料理長の奴はよくこのあたりに食材探しに来ていたらしいが」

「でもその人、あなたについてきてくれたかしら」

王様「ふん、この国でワシに逆らえるものなどおるものか」

「そうね、あなたすごく偉くてわがままになっちゃったものね」

王様「誰がわがままかっ……んん?」







57以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:08:42.63 ID:uTtcU/Zpo

 声のした方に顔を向けますが、そこには誰もいませんでした。
 おかしいなあと首をかしげます。
 確かに誰かがいたように思ったのですが、今思い返すと風の音だったようにも思えます。
 王様は気のせいか、と再び歩きはじめました。







58以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:09:25.17 ID:uTtcU/Zpo

王様「しかしこのまま進んでも森ばかり。水のにおいもしてこんわ」

王様「道を間違ったのは多分確かなのだからして引き返すべきかもしれんのう」

王様「ううむ仕方ない。面倒くさいが」

狼「こんにちは」

王様「うおお!?」







59以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:09:56.94 ID:uTtcU/Zpo

 振り返った先には丸々と太った狼さんが立っていました。







60以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:10:37.76 ID:uTtcU/Zpo

王様「な、なんだ貴様は!」

狼「わたしはこの森に住む狼です」

王様「そんなことは見ればわかる! さっさとどこかへ消えてしまえ!」

狼「そんなぁひどいですよわがまま王様ー」

王様「ち、近寄るな! 近寄ったら輪切り肉にしてやるぞ!」

狼「輪切り肉! おいしそうだあ!」







61以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:11:10.71 ID:uTtcU/Zpo

 とびかかってきた狼さん。
 王様は慌てて飛びすさって剣を抜き放ちます。
 狼さんは少し驚いたようですが、焦らずじりじりと距離を詰めてくるようでした。







62以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:11:37.73 ID:uTtcU/Zpo

狼「王様ぁそんな怖いもの出さないでくださいよー」

王様「……」

狼「そんなものでは私を止めることなんてできないですしー。分かってるでしょ?」

王様「く……」







63以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:12:04.77 ID:uTtcU/Zpo

 万事休す。
 王様は覚悟を決めました。
 こうなったら死を恐れずに戦うべきです。
 邪魔な鍋を捨てようとして……







64以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:12:31.95 ID:uTtcU/Zpo

王様(鍋? そうだ!)

狼「では、いっただっきまーす!」

王様「ちょぉっと待ったあぁっ!」

狼「?」







65以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:12:59.93 ID:uTtcU/Zpo

 王様の頭に、このときすごくいい考えが浮かんでいました。







66以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:13:43.30 ID:uTtcU/Zpo

王様「狼よ、よく聞け。ワシはお前に食われるなど死んでもごめんだ」

狼「ええ? でもぉ」

王様「でもじゃない! だからワシは死ぬ気で抵抗してやるぞ! しかし……」

狼「なんです?」

王様「どう考えてもワシの力ではお前に勝てるとは思えない」

狼「でしょうね」

王様「だがその場合お前も無傷ではいられまい。だから一つ提案がある。ワシを満足させてくれればお前はワシを食べていい」

狼「満足ですか?」







67以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:14:09.72 ID:uTtcU/Zpo

王様「うむ。ワシは小さいころから野イチゴを腹いっぱい食べたかったのだがお城の者が許してはくれんかった」

狼「それはかわいそうですねえ」

王様「いわく、ばっちいらしい。まあともかく、ワシは野イチゴを腹いっぱい食べてみたいわけじゃ」

狼「そして満足すれば私はあなたをたべてよいと」

王様「そういうことじゃ」

狼「キャッホーッ!」

王様「この鍋を使え」

狼「アイサー!」







68以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:14:36.71 ID:uTtcU/Zpo

 狼は鍋に野イチゴを溜め始めました。
 あの底なしの大鍋に。
 もちろんいつまでたってもいっぱいになんてなりません。







69以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:15:03.34 ID:uTtcU/Zpo

狼「あれれぇ、おかしいですねえ……」

王様「……」







70以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 21:15:32.50 ID:uTtcU/Zpo

 狼が首を傾げている間に、王様はこっそりその場を後にしました。







73以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:14:12.58 ID:79MKq6lso

王様「ふうやれやれ、まったく肝が冷えたわい」

王様「しかしはて、あの流れはどこかで覚えがあるような……」

王様「ううむわからん。まあよいわ」

王様「さてだいぶ引き返してきたぞ」

王様「ん、あれはさっきの大木じゃな」







74以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:14:43.47 ID:79MKq6lso

 地図の道に戻ってきた王様は、今度は間違えないように進みます。
 丘を越え、川を渡ってずんずん先へと進みます。
 今度はしっかり沼の方へと向かっているようで、次第にあたりの緑の密度が増してきました。







75以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:15:12.66 ID:79MKq6lso

王様「これはもうすぐ沼地に違いない」

王様「この岩を曲がれば……」

王様「曲がれば……」

王様「……」







76以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:15:44.67 ID:79MKq6lso

 行き止まりでした。
 慌てて地図を確かめます。







77以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:16:17.36 ID:79MKq6lso

王様「どういうことじゃ。あともう少しで魔女の根城なのに」

王様「この道をこう行って、こう来て」

王様「……?」

王様「……???」







78以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:16:52.33 ID:79MKq6lso

 確かに地図の通りに来たはずでした。
 でもなぜでしょう、地図を見ているとなんだか自信がなくなるのです。
 本当に自分は地図の通りに来たのだろうか、そもそもこの地図は本当のものなのだろうか。

 なんだかいろいろなものが曖昧になってしまうのです。







79以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:17:24.99 ID:79MKq6lso

王様「困ったことだ、ワシはどうすれば……はっ」


『その絵本はきっとあなたの行くべきところへと導いてくれるでしょう』


王様「あの商人はそんなことを言っていたか」

王様「ううむあまり気は進まんが……えい!」







80以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:17:51.13 ID:79MKq6lso

 王様は掛け声とともに絵本を開こうとしました。
 しかしその前になんと紙の隙間から何かが飛び出てきたではありませんか。
 その影は地面に降り立つと、鋭い視線をこちらに向けます。







81以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:18:18.00 ID:79MKq6lso

鎧「お前が沼地の魔女様に楯突くわがまま王か」

王様「なんじゃいきなり人をわがまま呼ばわりなど! お前は何者じゃ!」

鎧「俺は魔女様に使える地獄の騎士。煉獄に鍛えられしこの剛剣で貴様の息の根を止めに参った」

王様「ぬうう……!」

鎧「どうした恐ろしいか」

王様「真顔で恥ずかしいことを言う奴が怖くないわけあるか!」

鎧「俺を侮辱するか!」

王様「素直な感想じゃ!」

鎧「なら仕方ない!」







82以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:18:44.93 ID:79MKq6lso

 地獄の騎士は剣を構えて足を横へと踏み出します。
 王様もそれに合わせて間合いを取りつつ腰の剣を抜きました。

 睨み合い、







83以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:19:11.07 ID:79MKq6lso

王様「……うおおおおおお!」

鎧「フッ!」







84以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:19:37.50 ID:79MKq6lso

 同時に飛び出しました。

 一合、二合と打ち合って、力が完全に拮抗します。
 王様はわがままだけど、剣術の修業は真面目にやったのです。







85以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:20:03.58 ID:79MKq6lso

王様「くっ、やりおる……」

鎧「お前もなかなかねばるじゃないか」

王様「……やッ!」







86以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:20:29.85 ID:79MKq6lso

 王様は隙を突き何度も騎士に斬りつけます。
 しかし鎧や兜が邪魔をして、なかなか傷を負わせることができません。







87以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/10(日) 18:21:04.81 ID:79MKq6lso

王様「くそ、卑怯だぞ!」

鎧「お前も着てくればよかったものを!」

王様「森歩きに鎧とか馬鹿か!」

鎧「俺を侮辱するか!」

王様「事実じゃ!」

鎧「

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